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No.13 熱中症について

2015.08.16

熱中症とは?

近年わが国においては、地球温暖化の影響やヒートアイランド現象などにより夏季の暑熱環境は悪化し、暑さによる健康障害(熱中症)が問題になりつつあります。ここでは熱中症の定義と、熱中症の予防および対処方法についてご説明いたします。
熱中症が発症する暑熱環境とは、気温だけでなく湿度や気流、輻射熱などの気候因子がおおいに関係しています。また、激しい運動や労働などによって発症する場合もあります。年齢階級別の熱中症死亡数と死亡率を見ると、熱中症の死亡率は乳幼児で高く、加齢とともに死亡率は低下しますが高齢者になると急激に死亡率は増加します。このように乳幼児と高齢者、特に高齢者は熱中症のハイリスク群と言えるでしょう。
高齢者で熱中症による死亡が多くなる要因としては、人の体水分量は一般的に子供が80%、成人60%、高齢者は50%となっており、加齢にしたがって体水分量が減少します。また高齢者は成人に比べて体温調節機能が低下していることが認められていますので、熱中症が発症しやすいと考えられます。
乳幼児での発生の多い要因としては、乳幼児は体温調節機能が未発達であること、また保護者の不注意による放置自動車内での発生が原因に挙げられます。
同じ条件でもその日の体調によって熱中症のリスクは変わってくることがあります。二日酔いや睡眠不足、下痢、風邪気味などの体調不良や、肥満、高血圧、心疾患、腎臓病、内分泌疾患などの基礎疾患を有する人も熱中症のハイリスク群といえるでしょう。
運動時や労働時に発生する熱中症は10代後半から60歳代にかけて、幅広い年齢層で発生しています。いずれの場合も気温25℃以上、相対湿度40%以上で発生しやすくなり、気温が38℃を超えると死亡件数が大幅に増加します。
熱中症の分類を表にしていますので、参考にしてください。

熱中症  暑熱障害による症状の総称
軽症 熱失神  皮膚血管の拡張により血圧が低下し、脳血流が減少して起こる一過性
の意識消失
熱虚脱
熱痙攣  低Na血症による筋肉の痙攣が起こった状態
中等症 熱疲労  大量の汗により脱水状態となり、全身倦怠感、脱力、めまい、頭痛、
吐気、下痢などの症状が出現する状態
重症 熱射病  体温上昇のため中枢神経機能が異常をきたした状態
日射病  上記の中で太陽光が原因で起こるもの

熱中症の予防対策

熱中症予防の基本は、過度の体温上昇を抑えることと、脱水の予防の2点に限ると思われます。そのため水分や塩分を積極的に摂取することで脱水を予防し、熱中症の発生を減少させることができます。多量の発汗による脱水時には血漿量の減少と血液浸透圧の上昇が起こり、発汗と皮膚血流による熱放散が抑制され、体温が上昇します。また、脱水により体重減少が2%を超えると、有酸素性運動能力が顕著に低下します。
血液の塩分濃度は約0.9%ですが、発汗により水分と塩分が体内から失われると、身体はこの濃度を一定に保つように自分で調節しようとします。失った分の水分のみを補給すると、体液のナトリウム濃度も薄まってしまうので、身体はナトリウムの濃度を一定に保とうとして水分の排泄を増加させます。この現象を自発的脱水といいます。この自発的脱水を防ぐためには、塩分や糖分が含まれているスポーツドリンクを摂取することをお勧めします。先にも述べましたように、体重の2%以上の体重減少(脱水)が起こると、塩分を含んだスポーツドリンクを摂取しないと体液料は回復できず、熱痙攣を起こす危険性が高くなります。水分補給の際に摂取する水分の組成は、食塩0.1~0.2%と糖分を含んだものが効果的です。飲み物の温度は10~15℃くらいが望ましく、冷たいほうが小腸での吸収が早く、冷水による物理的な冷却効果も期待できます。近年、スポーツドリンクが多く発売されているので、水分補給のための活用が期待されています。また多量の脱水が生じてしまったときは、経口補液の利用も効果的と考えられます。

熱中症の応急手当

熱中症の分類は上記の表にまとめていますが、それぞれの症状にに応じた対処が必要となってきます。
熱失神の応急手当
涼しい場所に移し、下肢を高くし頭部を低くすることにより東部に血液が行きやすい状態に保ちます。次に衣服を緩め仰臥位安静を取り、脈拍や体温を測定します。意識がある場合は、水または0.2%食塩水を飲用させ、放熱を促すために末梢部を冷却します。
熱痙攣の応急手当
熱痙攣は発汗による塩分の損失が原因となり発症します。軽症の場合は涼しい場所に移動し、仰臥位安静とします。生理食塩水(0.9%)や塩分が含まれた食物を与えると、ほとんどの場合が回復します。飲水できなかったり、嘔吐や意識障害がある場合は生理食塩水の静脈注射を行わなければいけないので、一刻も早く医療機関に運ぶ必要があります。
熱疲労の応急手当
涼しいところで仰臥位安静状態を取り、意識確認、気道確保、呼吸確認、循環確認を行い、意識がある場合は水分補給を行います。また身体を冷却し、体温を下げます。意識障害や嘔吐がある場合は直ちに医療機関に運び、点滴が必要です。
熱射病の応急手当
熱射病は熱疲労が更に進行した状態です。直ちに医療機関へ運んでください。医療機関に運ぶまでの間は、前途の熱疲労の応急手当とともに極力体温低下に勤めます。
毎年夏には熱中症による死亡事故が後を立ちません。しかし正しい知識を持つことで、十分に防ぐことができます。また熱中症が発症しても適切な処置を行えば、死亡者数を0にすることは可能です。みなさんも熱中症の正しい知識を身につけて、この暑い夏を乗り切ってください。

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