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No.15 お薬の副作用について

2015.08.18

慢性疾患あるいは急性疾患で薬を服用されている方は少なくないと思います。薬を服用される時に気になるのは、やはりどれくらいの効き目があるのかということと、もうひとつは副作用の出現だと思います。
ここでは薬の副作用について、その中でも特に重篤といわれる副作用について、説明させていただきます。

薬剤性肺障害とは

抗がん剤治療、肝炎治療を行っている場合や、抗リウマチ薬、抗不整脈薬を服用中の場合、薬剤性肺障害を引き起こす可能性があります。薬剤が原因で肺障害を起こす基本的な機序として、肺組織を直接傷害する場合(細胞傷害性)と、アレルギーや免疫反応による場合(アレルギー性)の2つが挙げられます。細胞傷害性では、肺の細胞や気道の細胞、そして毛細血管が直接傷害されて炎症が起こり、肺胞では間質組織の炎症、慢性化すると線維化へと進行していきます。
アレルギー性では、薬によって免疫系細胞が活発に働くことが主な原因と考えられています。
実際には、これらが多様な背景因子とともに起こり、発生機序が複雑化することが多く見られます。背景因子としては、薬剤代謝関係や免疫関係の遺伝性素因や、加齢などの年齢的背景、性別、もともとの肺病態や併用薬剤との相乗的作用などが上げられます。
薬剤性肺障害の治療としては、まず疑わしい薬剤の服用を中止します。次に、副腎皮質ステロイドの投与、呼吸不全への対応、全身管理が基本となります。
副腎皮質ステロイドの適応と投与量は原因薬剤、発生機序、重症度などを参考に決められます。一般的にアレルギー反応による薬剤性肺疾患には副腎皮質ステロイドは有効であるといわれています。一方、細胞傷害性の機序で発生したびまん性肺胞傷害は副腎皮質ステロイド治療の効果は乏しいといえます。
薬剤性肺障害は薬剤のみならず、健康食品、サプリメント、非合法ドラッグなどでも肺障害が出現することがあります。薬剤を服用し始めて発熱したり、空咳がでたり、息苦しいと感じたときは受診するようにしてください。

薬物性肝障害とは

薬物性肝障害は全ての薬物で生じる可能性があり、漢方薬や健康食品、サプリメントなどでも起こることはよく知られています。近年は医薬品の開発が進み、その種類は増加の一方です。また高齢化により複数に疾患を併せ持つことによる多剤服用患者が増加傾向にあることもあいまって、薬物による健康被害も増加する傾向にあります。
肝臓は様々な代謝・解毒などを行っている重要な臓器です。つまりは糖代謝、脂質代謝、タンパク質・アミノ酸・アンモニア代謝、ビリルビン代謝、そして薬物代謝など、人間が生きていくうえで欠かすことのできない役割を担っています。薬物性肝障害は薬物による副作用の一つであり、全ての薬物で生じる可能性があるということを充分にご理解いただきたいと思います。
薬物性肝障害の原因となるものとして、抗菌薬、解熱・鎮痛薬によるものが多く、続いて循環・呼吸器科用薬、精神・神経科用薬、代謝性疾患用薬、消化器科用薬、抗悪性腫瘍薬、漢方薬などが上げられます。また健康食品による薬物性肝障害の頻度が高くなっているのが近年の傾向といえます。中国製のダイエット食品による劇症肝炎の事例が社会問題になったこともありました。薬物性肝障害の発生機序は複雑で、肝細胞の壊死・炎症反応の目立つ肝細胞障害型と胆汁うっ帯型そしてこれらが合わさった混合型に大別されます。
薬物性肝障害の治療は、まず原因と考えられる薬物の服用を中止します。肝細胞障害型の肝障害にはまずグリチルリチン製剤を注射します。そしてさらにウルソデオキシコール酸の経口投与を行います。肝細胞傷害が重症化し、劇症肝炎に陥ったときは、血漿交換、血液透析を行います。
薬物性肝障害の予防は定期的に肝機能検査をし、肝障害の有無をチェックする必要があります。多くの薬物性肝障害は薬物服用後4週間以内に起こることが多く、60日以内にそのほとんどが観察されます。また、自覚症状や薬物同士の相互作用にも常に気をつける必要があります。

薬物性血液障害とは

医薬品による副作用の中でも薬物性血液傷害は白血球減少、血小板減少、貧血など重篤なものが多いとされています。また薬物性血液障害の発生機序も様々で、汎血球減少症(再生不良性貧血)は用量依存性のものと特異反応によるものが考えられます。無顆粒球症については免疫学的機序と中毒性機序があり、前者は薬剤が顆粒球の膜に結合して抗顆粒球抗体を産生します。後者は薬剤あるいはその代謝物が核内物質や細胞質内タンパク質と結合して直接的に傷害すると考えられています。薬剤性貧血症はその原因となる医薬品ごとに貧血を引き起こす機序が異なり、末梢血中で赤血球を傷害し溶血するものと、骨髄中で赤芽球およびその前駆細胞を傷害するものの2つに大別されます。血小板減少症は薬剤により骨髄での血小板産生を抑制されるか、もしくは免疫学的機序により末梢での血小板破壊が原因と考えられます。
いずれの場合も薬剤性血液障害に陥ったときはまず疑わしい薬剤を中止し、それに加えて状態に応じた対症療法も必要です。

薬疹とは

身体に合わない薬剤を服用すると、薬疹が出ることがあるということはご存知の方も多いと思います。薬剤による薬疹の原因としては抗生物質が一番頻度が高く、続いて非ステロイド性消炎鎮痛剤、降圧利尿剤などがあります。薬疹の発症機序としてはアレルギー性のもの、薬剤の毒性・蓄積によるもの、薬理作用によるものなどが上げられます。薬疹の治療としては、症状と重傷度によって異なりますが、中等度以上ではステロイド薬が第一選択薬になります。蕁麻疹や血管浮腫の治療には抗ヒスタミン薬の投与や補液を行い、症状が重篤な場合はステロイド薬の全身投与を行います。さらに血圧低下をきたした場合はエピネフリンの注射などアナフラキシーに準じた治療を行う必要があります。非アレルギー性の機序による薬疹の治療はステロイドの外用剤を用いることが多く、ステロイドで充分な効果が得られないときは免疫グロブリン製剤の静脈注射や、血漿交換療法に移行する必要があります。またStevens-Jhonson症候群や中毒性表皮壊死症は粘膜障害や多臓器障害を伴うために生命をも脅かし失明をはじめとする重篤な後遺症が残ることもしばしばあります。
薬物による副作用は軽微なものから重篤なものまで様々な症状が現れます。薬を飲み始めて今までと違う症状が現れたらすぐに主治医に報告し、適切な治療を受けるよう心がけてください。

過去の一覧

2016.05.30
No.17 不眠症と薬物療法について
2015.08.19
No.16 日焼け対策と美白化粧品について
2015.08.17
No.14 食物アレルギーについて
2015.08.16
No.13 熱中症について
2015.08.15
No.12 食品・嗜好品と薬との相互作用について

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