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No.17 不眠症と薬物療法について

2016.05.30

人間にとって睡眠は身体の休息はもちろん、脳が休息するための大切な時間です。身体の疲れは横になって身体を休めるだけでもある程度回復できますが、意識や知能、記憶など知的活動を行う大脳は起きている限り休息することは不可能です。睡眠は脳を深く眠らせて、精神的な疲労を回復する大切な営みなのです。また、昔から「寝る子は育つ」といいますが、脳が深い眠りに入ると成長ホルモンが分泌されることもわかっています。この成長ホルモンは細胞の新陳代謝を促して、皮膚や筋肉、骨などを成長させたり、日中の活動で傷ついた筋肉や内臓などを効率よく修復する働きがあります。私たちは、心と身体の健康を保つために眠る必要があるのです。

ところが、厚生労働省が全国の3歳~99歳の6466名を対象に行った睡眠に関する調査によると、現代人の5人に1人が睡眠に関する悩みを抱えていることがわかっています。また、10人に1人が長期の不眠で悩んでいるという深刻な状況が浮かび上がっています。

ここでは睡眠と不眠、そして快適な睡眠を得るためのちょっとした工夫を紹介させていただきます。

睡眠のメカニズムについて

睡眠には浅い眠りのレム睡眠と、深い眠りのノンレム睡眠があります。眠りにつくと、まずノンレム睡眠があらわれ、次に浅い眠りのレム睡眠へと移行します。

ノンレム睡眠とは脳が眠っている状態で、夢はほとんど見ませんが、身体を支える筋肉は働いている状態です。また眠りが深くなるにしたがって、呼吸回数・脈拍が少なくなってきます。レム睡眠とは身体は深く眠っているのに脳が起きているような浅い眠りを指し、夢を見たり、眼球がキョロキョロ動いています。また身体の力が完全に抜け、呼吸や脈拍も不規則な状態です。

私たちの眠りはこれら性質の異なる2種類の睡眠で構成されており、約90分周期で一晩に4~5回、一定のリズムで繰り返されています。

不眠のタイプについて

不眠タイプ

一口に不眠症といっても色々なタイプがあります。自分の不眠のタイプを知ることが治療の近道になることが多いので、以下のどのタイプに当てはまるのか、考えてみましょう。

「入眠障害型」

布団に入ってから眠りにつくまでの時間が30分以上かかる、いわゆる「寝つきが悪い」症状です。心配事や精神的ストレスがあったり、睡眠にこだわりを持っている人で起こりやすくなります。ちょっとした心配ごとや悩みがあって眠れない、旅行先で眠れなくなったという経験は誰にでもあると思いますが、寝つきが悪い状態が続くとそれがストレスとなり、余計に眠れなくなってしまうこともあります。

「熟眠障害型」

睡眠時間は十分にとったはずなのに、熟睡したという満足感が得られない状態をいいます。健康な人の場合、よく眠ったという熟睡感は深いノンレム睡眠の量と相関するといわれています。なので、睡眠時間は確保できていてもノンレム睡眠の量が少ないと、脳が深く眠っている時間が少ないので「ウトウトしただけで一晩中ほとんど寝ていない」という感覚を覚えるのです。

「早朝覚醒型」

朝、起床しようと思う時間よりもやたらに早く目が覚めてしまう症状です。日本では成人の7.9%が早朝覚醒の不眠を経験しています。特に高齢者でよく見られる症状ですが、これはうつ病の初期にもみられる症状ですので、うつ病の患者が増えている現代では増加傾向にあります。

「中途覚醒型」

夜中に何度も目が覚めて、一度目が覚めるとなかなか眠れないという症状です。睡眠障害のタイプの中でも特に多いタイプで、飲酒や夜間の頻尿、むずむず脚症候群など睡眠を妨げる身体的な原因がある場合に起こりやすくなります。日本では成人の15%が中途覚醒の不眠を経験しており、特に高齢者に多くみられます。

不眠の薬物療法

わが国で承認されている主な睡眠薬はバルビツール酸系睡眠薬、ベンゾジアゼピン受容体作用薬(BZ系薬)、メラトニン受容体作用薬、オレキシン受容体拮抗薬の4種類がありますが、バルビツール酸系睡眠薬は耐性や依存などの問題から現在はほとんど使用されておらず、BZ系薬が処方の主流となっています。

BZ系薬には血中半減期から超短時間型、短時間型、中間型、長時間型に分類され、入眠障害型には超短時間型もしくは短時間型、中途覚醒型や早朝覚醒型、熟眠障害型には中間型や長時間型が選択されることが多く見られます。しかしながら、血中半減期と効果が相関しないことも多く、まずは超短時間型または短時間型から開始し、様子を見ながら中間型、長時間型へ変更していく方がよいでしょう。

メラトニン受容体作用薬のラメルテオンは、メラトニン受容体に作用することで体内時計を調節し、睡眠と覚醒のリズムを整えます。このような作用機序のため、ラメルテオンの効果が表れるには時間がかかります。少なくとも、2週間を目安に薬の効果を判定しなければいけません。

オレキシン受容体拮抗薬のスボレキサントは、覚醒を促進するオレキシンの受容体への結合を阻害し、覚醒神経核を抑制することで睡眠を誘導する新しい作用機序のお薬です。

これらの薬をしばらく続けて眠れる自信がついてきたら、医師の指示のもとで薬の減量を検討します。薬の減量はあせらずゆっくりと行い、お薬がなくても眠れる自信を持てるようにコントロールしていくことが大切です。現在、睡眠薬を服用して不眠が改善している方は、ご自分の判断で急に薬を中止すると不眠が悪化することがあるため、必ず医師に相談するようにしましょう。

睡眠薬は「癖になる」「重大な害がある」「飲み続けると認知症になる」などということはありません。医師の指示を守って正しく服用しましょう。

不眠の非薬物療法

不眠の非薬物療法

不眠症の治療において薬物療法はとても重要ですが、最近は睡眠環境を整えることも不眠の改善に効果的だといわれています。

まずは寝室環境を整えましょう。うるさかったり明るすぎたりすると、脳が刺激されるためなかなか寝つくことができません。また、寒過ぎても暑過ぎても睡眠の妨げになるので、部屋の温度や湿度を快適に保つことが必要です。

また寝具選びも重要です。一般的に、柔らかく軽い掛け布団、適度な堅さの敷布団、ほどよい高さの枕がよい寝具といわれています。もちろん、寝心地のよさも大事な要素です。素材や肌触りにまでこだわって快適な寝具を選びましょう。特に枕は、高さや堅さが肩から首のカーブに合っているかどうかが重要なポイントです。一度今使っている枕が自分の身体に合っているか、チェックするのもいいでしょう。

次に適度な運動を心がけましょう。慢性的な運動不足はストレスを増大させ、不眠の原因になります。適度な運動でストレスを解消し、精神的なリフレッシュを心がけましょう。就寝前に布団の上で手軽にできるストレッチもお勧めです。就寝前のストレッチは、筋肉のこりをほぐすだけでなく、副交感神経にも働きかけて眠りやすくしてくれます。

スムーズな眠りを得るためには、眠る1~2時間前から脳をリラックスさせるよう心がけましょう。 勉強や仕事など頭を酷使するような作業は避けて、お気に入りの音楽を静かに流したり、軽めの雑誌や本を読んだりしましょう。寝る前に37~39℃のぬるめのお風呂に入ると心身ともにリラックスできます。室内の照明を少しダウンさせるのも効果的です。

冒頭にも書きましたが、人間にとって睡眠は身体の休息はもちろん、脳が休息するための大切な時間です。心も身体も健やかに保つために、質の良い睡眠を心がけましょう。

過去の一覧

2015.08.19
No.16 日焼け対策と美白化粧品について
2015.08.18
No.15 お薬の副作用について
2015.08.17
No.14 食物アレルギーについて
2015.08.16
No.13 熱中症について
2015.08.15
No.12 食品・嗜好品と薬との相互作用について

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